もう20年前の映画になる。
そのころ一世を風靡した、タイタニックという映画があった。
私は、この映画を映画館で2回見た。
後にも先にも、2回見たというのは、記憶になく、
それほど、印象強く、心が揺さぶられた映画だった。
タイタニックは、豪華客船であり、
映画で出てくる船の様子は、船全体がホテルのような街のような仕様で、
なんでも欲しいものが手に入り、エンターテイメントも行われていた。
とても魅力的ではあったが、
一生のうち、私がタイタニックのような豪華客船に乗って、
何日もかけて旅をすることは、
時間的にも、せっかちな気質的にも難しいと感じられた。
また、過去に沖縄・波照間島で漁船でひどく酔った苦い経験もあって、
船旅は、到底私には縁がないと思っていた。
ところがである。
以前から、なんとなく気になっていた佐渡島に行くには、
金沢から行くには船が好都合だった。
たまたま急にスケジュールが空いて、
さあ、どこに行こうかという話になったのだが、
躊躇する気持ちはあったものの、お天気はいいという情報であり、
こんなチャンスはそうない、それなら、と意を決して、
波が高くないようにと祈りながら、旅に臨んだのだった。
船は、新幹線などと同じく、席がいくつかに分かれていて、
スイート、特等、1等、2等と分かれていた。
行きは1等を選択。
船の前面に席が並んでいて、
一番前の席に運よく座ることができた。
座席はまだ新しくてきれいで、柔らかい白いレザーの座り心地のいいものであった。
その高級感あふれる座席と、前面に広がる青く輝く海を見て、
友人とテンションが早くも急上昇。
素晴らしい旅の予感を感じたのでした。
興奮冷め止まぬまま、のはずが、
あまりの椅子の心地よさと、ほどよい揺れのためか、
いつの間にか私たちは、うとうとと寝入ってしまったのでした。